Newton Vineyard

ニュートン・ヴィンヤード(Newton Vineyard)

ニュートンは1977年にPeter Newtonによってセントヘレナの西、マヤカマス山脈の東側に位置する起伏に富んだアペラシオン「スプリングマウンテン」に設立されました。自然発酵や無濾過瓶詰めなど昔ながらのスタイルをベースにした技術を用いてワイン造りを行うニュートン・ヴィンヤードのワインはジョージ・ブッシュやビル・クリントン大統領の在任中を含むホワイトハウスの様々な行事で提供されてきました。ここでは誇り高きニュートン・ヴィンヤードの歴史と歩んだ軌跡をご紹介します。

ニュートン・ヴィンヤードについて

Peter Newton and Su Hua Newton

Peter Newton and Su Hua Newton
参照元:newtonvineyard.com

1926年にロンドンで生まれたPeter Newtonピーター・ニュートンはオックスフォード大学で法律を学び、フィナンシャルタイムズのジャーナリストとしてサンフランシスコで活躍すると製紙会社Sterling Internationalを立ち上げます。

1969年になるとカリストガでワイナリーSterling Vineyardsを設立し、その後1977年にコカ・コーラ社に売却した資金でスプリングマウンテンのセントヘレナに560エーカーの土地を購入し妻Su Hua Newtonスー・ファ・ニュートンと共にNewton Vineyardニュートン・ヴィンヤードを設立しました。

この土地は曲がりくねった地形に沿って畑が設けられており岩の多いローム土壌から火山性の土壌まで多種多様な区画を有する特殊な土地でした。また、海抜500フィートから1,600フィートまである為、ブドウ栽培にはうってつけの土地でした。

John Kongsgaard

John Kongsgaard
参照元:cephas.com

当初はワインメーカーにRic Formanを迎え入れ、ニュートンのワイン造りを担いましたが、1980年代初頭にニュートンとの口論に加え、自身の名を冠したワイナリーForman Vineyardを設立する目的もあって、ワインメーカーの職を退く事になります。1983年になるとワインメーカーの後継者としてコングスガードでお馴染みのJohn Kongsgaardが就任します。

John Kongsgaardはニュートン・ヴィンヤードで後にシャルドネのフラッグシップとなるUnfiltered Chardonnay(無濾過製法によるシャルドネ)を開発しニュートンの名を世に知らしめます。

1990年代に入ると伝説のフランス人コンサルタント・ワインメーカーMichel Rollandを迎え入れます。更に1996年にはMorlet Family Vineyardsの設立者であるLuc Morletをワインメーカーとして迎え入れます。

ニュートン・ヴィンヤードが直面した困難と転機

年月を経てワインの種類はシャルドネ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニョンに加えて、パズルと呼ばれるボルドーブレンドまで洗練されていった一方で、度重なるワインメーカーの交代でニュートンのスタイルを維持する事が困難になっていきました。

2001年になるとワイナリー経営が困難になった事からニュートン・ヴィンヤードの株式の過半数をLVMHへ売却します。LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトンは数々の名門ワインブランドを所有するフランスの高級品メーカーで、ワイン & スピリッツ部門ではDom Perignon、Chateau d’Yquem、Moet & Chandon、KRUG等の超一流メーカーを傘下に連ねている大企業です。

暫くの間はニュートン家が残留してワイナリー経営を続け、Michel Rollandがコンサルタントを務めます。

LVMH

LVMH
参照元:veganrabbit.com

Peter Newton

Peter Newton
参照元:nytimes.com

2008年2月4日Peter Newtonピーター・ニュートンはカリフォルニア州セントヘレナの自宅で心不全の為亡くなりました。享年81歳。

Peter Newtonピーター・ニュートンは1926年8月27日にロンドンで生まれ、ジャーナリストを経て起業。Sterling Vineyardsに続きNewton Vineyardsを設立しナパバレーで最初にメルローの栽培に力を入れた先駆者でした。

Peter Newtonピーター・ニュートンが亡くなるとLVMHは残りの株式を取得しニュートン・ヴィンヤードの全経営権を獲得しました。この新生ニュートン・ヴィンヤードではカリフォルニア州立大学フレズノ校でワイン醸造学を学んだChris Millardがワインメーカーを担当します。

主なリリースワイン一覧

ニュートン・ヴィンヤードでは赤ワインの殆どがエステート(自社栽培)ですが、シャルドネは全てカーネロスの生産者から購入しています。また、トップワインは全て無濾過(アンフィルタード)で瓶詰めされ、赤ワインとアンフィルタード・シャルドネは瓶詰め前に約2年間樽で保管されます。ここではニュートン・ヴィンヤードの特筆すべきリリースワインを厳選してご紹介します。

Cabernet Sauvignonカベルネ・ソーヴィニョン
様々な土壌タイプを持つSpring Mountainスプリングマウンテン、岩だらけの丘陵地帯が特徴のYountvilleヨントビル、水はけのよい若々しい土壌を持つMount Veederマウントビーダーの3エリアからそれぞれリリースされています。また、これらのブレンドを無濾過で造るアンフィルタード・カベルネ・ソーヴィニョンもリリースされています。
Chardonnayシャルドネ
カーネロスの生産者からの買いブドウで造られるシャルドネは、カーネロスの最高のブドウを集めて造られるCarnerosカーネロス、高品質で定評のあるブドウ栽培業者ベックストーファー・ヴィンヤーズのブドウで造られるBeckstofferベックストーファー、ニュートン・ヴィンヤードのフラッグシップにもなっている無濾過で造られたUnfilteredアンフィルタードがリリースされています。

また、近年では2007年にレッドラベルとして誕生したシリーズが改良されメンドシーノ、ソノマ、レイク、ソラーノ、ナパを含む北海岸のアペラシオンを構成する5つの郡から最高級のブドウを調達し、リーズナブルな価格で販売されるSkysideスカイサイドが注目を集めています。
※スカイサイドシリーズはカベルネ・ソーヴィニョン、レッドブレンドもリリースしています。

Merlotメルロー
ニュートン・ヴィンヤードはナパバレーで最初にメルローの栽培に力を入れた生産者で実はニュートン・ヴィンヤードのフラッグシップワインです。ブドウの供給源はスプリングマウンテンで、無濾過(アンフィルタード)で造られます。
Puzzleパズル
スプリングマウンテンの112区画から厳選された最高のロットで造られたカベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン、メルロー、プチ・ヴェルド、マルベックで構成されるボルドーブレンドです。

近年のニュートン・ヴィンヤード

所有権がLVMHに完全に移転してからはニュートン・ヴィンヤードの評判は落ちていく一方でした。そこでLVMHは、2014年にオーストラリアのワインメーカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれたカベルネのスペシャリストRob Mannを迎え入れます。

更に2016年にはワイン醸造責任者にAlberto Bianchiを就任させ新しいニュートン・ヴィンヤードのチームを形成して再建を図ります。Alberto Bianchiはミラノ大学、トリノ大学、リスボン大学でワイン醸造とブドウ栽培の学士号を取得しイタリア、フランス、オーストラリア、アルゼンチン、ニュージーランドでワイン造りの経験を積み、2014年にニュートン・ヴィンヤードに参画した実力者です。こうしてニュートン・ヴィンヤードは徐々に名声を取り戻していきました。

1977年からPeter Newtonピーター・ニュートンによって築き上げられた「自然を尊重する」ワイン造りの哲学はワイナリーの所有権が整理され、新しいワインメーカーが就任した今、改めて受け継がれ、品質と一貫性の両方が向上しているはずです。

Newton Vineyard Team

Newton Vineyard Team
参照元:newtonvineyard.com

ワインテイスティングレポート

Newton Vineyard Unfiltered Merlot 1994
2020年11月6日

Newton Vineyard Unfiltered Merlot 1994

ナパバレーにおけるメルローの先駆者と呼ばれたニュートン・ヴィンヤードの隠れフラッグシップワイン。貴重な1994年のアンフィルタード・メルローを入手したのでテイスティングレポートをご紹介します。

Newton Vineyard Unfiltered Merlot 1994

ブラックチェリーの香りの後にスモーキーなニュアンスがハッキリと取れる。またモカやビターチョコのようなニュアンスもある。味わいは甘みは控えめで酸味は比較的シッカリとしている。タンニンはこのヴィンテージでもシッカリと残っている。ハッキリとしたスモーキーなニュアンスが特徴的素晴らしい1本でした。

Newton Vineyard Skyside Chardonnay 2018 vs Unfiltered Chardonnay 2016
2020年11月6日

Newton Vineyard Skyside Chardonnay 2018 vs Unfiltered Chardonnay 2016
ジョン・コングスガードが開発したニュートン・ヴィンヤードの代名詞とも呼ぶべきアンフィルタードシリーズのシャルドネとレッドラベルシリーズのスカイサイドを近いヴィンテージで飲み比べます。

Newton Vineyard Skyside Chardonnay 2018

スカイサイドはオーク樽とステンレスタンクを組み合わせて発酵させているので樽のニュアンスがさほど強くない。パイナップルやゴールデンアップルの香りにアプリコットやジンジャーのニュアンスが取れ、若干クリーミーさが感じられる。味わいは甘みはソフトで酸味は爽やか。苦味は穏やか。

Newton Vineyard Unfiltered Chardonnay 2016

洋ナシやトロピカルフルーツの香りにヘーゼルナッツやバターのようなニュアンスが取れる。Skyside Chardonnay 2018と比べるとシッカリ樽が効いておりクリーミー。味わいは甘みはシッカリと感じられまろやかだが酸味は爽やか。苦味は非常に穏やか。

この2つのシャルドネは全く正反対のタイプに付き比較テイスティングが大きな意味を持ったと感じました。

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ABOUTこの記事をかいた人

日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート
カリフォルニアワイン協会認定資格 California Wine Certification Program Level 2

2011年よりカリフォルニアワインのバックヴィンテージを追求。 ナパバレー、ソノマに足を運び数多くの名門ワイナリーを訪問。 主に海外のワインオークションで希少なバックヴィンテージを調達。

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