ワイナリー 2020.08.07
2021.04.30
林 亨(はやし りょう)
Domaine Carneros
アメリカ・カリフォルニアの地でフランス・シャンパーニュの伝統を用いて世界クラスのスパークリングワインを造りだす事を目的にフランスのTaittinger社とアメリカのKobrand Corporation社のジョイントベンチャーで始まったDomaine Carnerosドメーヌ・カーネロスの歴史と功績をご紹介します。
ドメーヌ・カーネロスについて
フランス・シャンパーニュ地方にあるシャンパーニュハウスTaittingerテタンジェの2代目である
Claude Taittinger はカリフォルニアのLos Carneros地域が世界クラスのスパークリングワインの生産に適した優れた特性のブドウを生み出す事を知り、1970年代後半から土地を探し始めました。
そして1987年にナパとソノマを跨ぐLos Carneros AVAに138エーカーの土地を購入し、Domaine Carnerosドメーヌ・カーネロスを設立しました。
このプロジェクトは
TaittingerとKobrand Corporationのジョイントベンチャーです。
Taittinger社はフランス・シャンパーニュ地方のReimsでChampagne Taittingerを運営するシャンパーニュで4番目に古い老舗ワイナリーです。Kobrand Corporationは1944年創立のニューヨークを拠点として成功を収めている企業で、ナパのSequoia Grove WineryとソノマのSt.Francis Wineryを所有しています。
また、数々の著名なワインブランド(サッシカイアやルイ・ジャド)の販売代理店でもあります。1989年にはワイナリーとビジターセンターを完成させます。
建物は本家シャンパーニュハウスTaittingerのChateau de la Marquetterieをモデルにした迎賓館のような造り になっており、シャルドネとピノノワールのブドウ畑を見下ろす丘の上にあります。
創業ワインメーカーにはEileen Craneが就任しました。 Eileen Craneはカリフォルニア大学デイビス校でEnologyとViticultureの学位を取得し、その後Domaine Chandonでアシスタントワインメーカーを、Gloria Ferrer Caves & Vineyardsでワインメーカーを務めた経歴を持ちます。
※ドメーヌ・カーネロスではCEOであり創業者でもあります。
こうしてカリフォルニアの地でフランス・シャンパーニュの伝統を用いて、世界クラスのスパークリングワインを造り上げるプロジェクト「シャンパーニュ・メソッド・スパークリングワイン・プロジェクト」は始動しました。
着実に進化するドメーヌ・カーネロス
ドメーヌ・カーネロスのスパークリングワインはシャンパーニュで使用される伝統的な方法(methode champenoise)で生産され、95%が自社畑(4つのブロックで構成)のブドウを使用しています。
1988年にはノンヴィンテージのBrutが3,000ケースリリースされ、1991年になるとヴィンテージスパークリングをリリース。
また、ドメーヌ・カーネロスの2番目のキュヴェDomaine Carneros Blanc de Blancsのプロトタイプが同じ1988年に造られました。このDomaine Carneros Blanc de Blancsは後にドメーヌ・カーネロスの高級ライン「Le Reve(フランス語で夢を意味する)」の原型となるものでした。
1992年にはドメーヌ・カーネロス初となるピノノワールをラインナップに追加します。以降、毎年2種類のピノノワールをリリースする事になります。
1つはEstate、もう1つはワイナリーでのみ入手可能なThe Famous Gate と呼ばれる限定リリースです。また、1998年になるとAvant Garde と呼ばれる3番目のピノノワールが追加されました。
※若いブドウから造られ、ワイナリーでのみ購入可能。
ドメーヌ・カーネロスでは今後、スパークリングワインの取り組みを成長させながらピノノワールの生産量を2倍に増やしていく事を計画しています。
2003年になると18,000フィートのソーラーパネルを備えた最先端のスティルワイン醸造施設をメインの建物の裏に建設し、ピノノワールへの投資をさらに促進させました。
このスティルワイン用施設は環境に優しく、太陽エネルギーを利用して施設に電力を供給し、水の再生やゴミのリサイクルも実施しています。
このように環境に優しい施設に加え、魚に優しい農法で自然の生息地を保護しています。また、ドメーヌ・カーネロスではCCOF認定を受けており、全てのブドウ園は有機栽培されています。
当初ノン・ヴィンテージ・ロゼはドメーヌ・カーネロスのテイスティングルームでのみ販売されていましたが、その品質の高さから人気が高まり、2007年秋以降全国販売されるようになりました。また、ちょうどこの年にドメーヌ・カーネロスはカリフォルニア認定の有機農家となりました。
2008年にはピノノワールのワインメーカーにTJ Evansが加わりました。 マサチューセッツ州のアマースト大学とカリフォルニア大学デイビス校で学位を取得した後、フランスDomain Jean Louis-Chave、ニュージーランドVilla Maria Estate、カリフォルニアRobert Mondavi Winery、Far Niente、チリVinedos Y Bodegas Corpora等世界各国でワイン醸造の経験を積んだ人物です。
こうしてドメーヌ・カーネロスではスパークリングワイン造りに磨きを掛けながらピノノワールの生産にも力を注ぎ、唯一無二のワイナリーへと進化していきます。
主なスパークリングワイン一覧
Estate BrutCuvee
100%自社畑(エステート)ブドウで造られるこのスパークリングワインは3年の熟成を経てリリースされ、高い熟成能力があります。
ブドウ品種構成は53%シャルドネ、47%ピノノワールとなっています。また、6年の熟成を経てリリースされる上位版Late Disgorged Brutもあります。
Ultra Brut
100%自社畑(エステート)ブドウで造られる非常に辛口で爽やかなこのスパークリングワインは滅多に生産されず、ワイナリー限定販売の希少なスパークリングワインです。
ブドウ品種構成は52%ピノノワール、48%シャルドネとなっており、ピノノワールとシャルドネをほぼ均等にブレンドしています。
Brut Rose
ドメーヌ・カーネロスのロゼはナパロードにある56エーカーの土地Pompadourpの畑から収穫されたブドウを主体に造られます。ブドウ品種構成は58%ピノノワール、42%シャルドネとなっています。
また、5年の熟成を経てリリースされる上位版Late Disgorged Brut Roseもあります。
Le Reve Blanc de Blancs
フランス語で「夢」を意味する「Le Reve」は、100%自社畑(エステート)且つ100%シャルドネで造られるTete de Cuvee(一番搾汁)で、ドメーヌ・カーネロスの最高級スパークリングワインです。
その年にもよりますが通例リリースまでには5~6年の熟成期間が設けられます。
La Rocaille
1995年に所有されたワイナリーの東、カーネロスハイウェイの南側に位置する畑La Rocailleから収穫されたブドウで造られるこのシングルヴィンヤード・スパークリングワインは収穫時に突出した品質の区画を特定し、その区画の厳選されたブドウのみが使われます。
ブドウ品種構成は53%ピノノワール、47%シャルドネとなっています。
Blanc de Noir
約20年前にシャルドネとの相性を無視して試験的に導入されたこのBlanc de Noirは100%ピノノワールで構成されており、ごく少量の生産数に留められました。ファーストヴィンテージは1991年。
近年のドメーヌ・カーネロス
2020年にドメーヌ・カーネロスのCEO兼ワイン生産者であるEileen Craneが辞任する事を表明しました。
2020年の収穫とキュヴェブレンディングまでリードスパークリングワインメーカーとして継続する予定です。スパークリングワインメーカーの役割を引き継ぐのは醸造チームのメンバーとして10年以上働いているZak Millerです。
Eileen Craneはスパークリングワイン醸造の豊富な経験を持ち、TaittingerのChateau de la Marquetterieをモデルにしたドメーヌ・カーネロスの城の建設を指揮し、シャンパーニュとカリフォルニアの絶妙なバランスのスパークリングワインを進化させてきました。
現在、71歳になるEileen Craneは「引退」という形で42年間のワインビジネスに幕を下ろす事になります。ドメーヌ・カーネロスはZak Miller主導の元どのような進化を遂げていくのか目が離せません。
テイスティング・レポート
Domaine Carneros Brut Vintage 2016 vs Le Reve Blanc de Blancs 20122020年7月11日
Brut Vintage 2016
香りは柑橘類やリンゴの香り。味わいは酸味が非常にシッカリしている。
Le Reve Blanc de Blancs 2012
香りは柑橘類やリンゴ、レモンの香りの中にブリオッシュのニュアンスが取れる。
味わいはクリーミーで酸味が非常にシッカリしており、後味に長く続く。
Le Reveの方は熟成から来るクリーミーさや複雑性がハッキリと感じられました。
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